PDFは電子の紙としてPC上に紙を再現したものだが、電子ブックは本をPC上に再現したものではなく、コンテンツを読むという行為をPC上に再現している点で、指向する方向性が異なる。まだ洗練されるには時間がかかりそうだが、こうした本の読み方がポピュラーになると、文字を紙面にレイアウトするという行為にも変化が出てくることになるだろう。読者がどのような画面でコンテンツを読むのかがまちまちだから、デザイナーが決め打ちしたレイアウトを押しつけるというわけにはいかなくなってくるからだ。つまり、紙に印刷されることを前提としないレイアウトをデザイナーが考える必要が出てくる。
Webという方法が一般的になったときにも、印刷されないコンテンツが前提となり、そのままトレンドが進みそうに見えた。ところがそうは問屋が卸さなかった。デザイナーは、XGAやSVGAに「最適化」したページデザインをするようになり、ユーザーがフォントや、そのサイズを変えようものなら、ページの体裁がガタガタに崩れるようなページばかりになってしまった。フルHDの大画面ディスプレイを持っていても、その解像度を有効に活かせるページはまず見あたらない。デザイナーが画面というデバイスを、紙と同じようにしか見ていないからだ。それは、画面にコンテンツを印刷するのと同じで、デバイスの特性を活かす発想としてはきわめて貧弱なものだと思う。どんなデバイスでも見かけを同じにしなければならないという呪縛から逃れられる、めったいにないチャンスだったのにと思う。だから3年前のスペックのPCでもインターネットは十分に楽しめるということになってしまうのだ。それでよかったのか悪かったのか。